JA3CGZは大阪豊中市に開設するアマチュア無線局です。20年ぶりに電子申請でカムバックしました。このブログはアマチュア無線の話題を投稿していきます。

大きく変化したアマチュア無線界【1】~新通信方式登場とバンド拡張

最近、アマチュア無線界に興味を持ち始めた方や、再び関わろうと考えている方が多いかもしれません。

あなたが最初にハムの資格を取得したのは、いつでしたか?学生の頃に無線局を開設し、社会人になってからは忙しさのために活動を休止していたという方もいるでしょう。

アマチュア無線の世界は、過去と現在で大きく変化しています。

今回と次回の記事で、約25年前、2000年頃のアマチュア無線の「常識」と、現在の大きな違いについて紹介します。

この記事は、CQ誌2023年12月号の同名記事を参照しています。

新通信方式の登場

SSB/CW だけじゃない, HF の主力は FT8へ

デジタルモードようの通信ソフトウエア「WSJT-X」を使ったFT8運用イメージ
デジタルモード用通信ソフトウエア「WSJT-X」を使ったFT8運用イメージ

HF帯の主要な電波方式として、長らくSSBとCWが支配的でした。

皆さんも、マイクを通じてコールサインを繰り返し呼びかけたり、モールス信号の微かな音を聞き分けた経験があるかもしれません。

しかし、2015年頃からアマチュア無線の世界は大きく変化し、デジタルモードである「JT65」やその進化版「FT8」が広まりました。

 

これらのモードでは、専用のソフトウェアをインストールしたPCを無線機に接続し、短い定型文を交換します。

FT8では、1回の送信に約15秒かかりますが、非常に微弱な信号でもソフトウェアで解析し、表示することが可能です。

例えば、アマチュア無線四級の許可されているHF帯10Wの出力や、ベランダに設置した小型アンテナでも、海外との交信が可能です。

興味深いことに、20WのFT8出力がSSBの25kW出力に匹敵するという試算もあります。

 

今日では、FT8はSSBやCWを上回る人気を誇っています。

FT8の「標準周波数」を受信してみると、独特なデジタル信号音が15秒間隔で聞こえます。

SSBやCWバンドが静かな時でも、FT8の頻度の高さや局数の多さを感じることができるでしょう。

FT8運用周波数数
HF帯の代表的なFT8運用周波数数

FT8を活用すれば、アマチュア無線四級の資格を持っていても、海外との交信を楽しむことができます。

このモードでは、ソフトウェアが自動で定型文を送受信するため、英語のスキルやマイクは必要ありません。

この手軽さが、DXCC(ディスタンス・カントリー・チャレンジ)や海外アワードへの挑戦、さらには電波伝搬への興味を引き起こすきっかけとなっています。

また、50MHz帯では異常伝搬時に入感する微弱な海外局との交信にFT8が利用されています。

さらに、144MHz、430MHz、1200MHz帯でもFT8の愛好者が増え、FT8はアマチュア無線の主流になりつつあります。

144/430MHz帯ではデジタル音声通信 (D-STAR/C4FM) も人気

大きく変化したアマチュア無線界【1】~新通信方式登場とバンド拡張
左からTH-D75[JVCケンウッド]、 FT5D[八重 洲無線]、DJ-X100[アルインコ]

144MHz/430MHz帯では、従来アナログFMモードが主流でしたが、2000年代に入ってから、デジタル音声通信の「D-STAR」と「C4FMデジタル」モードが人気を集めています。

市販されている144/430MHz帯のハンディ機の多くは、アナログFMとD-STARをサポートする機種(例えばアイコムやJVCケンウッド)や、アナログFMとC4FMデジタルをサポートする機種(八重洲無線)があります。

また、アルインコからはD-STARとC4FMデジタルの両方を受信できる広帯域受信機も発売されています。

 

D-STARやC4FMデジタルの特徴としては、信号強度が一定以上であれば音声が非常にクリアになります。

また、GPSと連携した位置情報や自局のコールサインなどのデータを付加することができます。

さらに、D-STARの一部機種ではスマートフォンと連携でき、C4FMデジタルの一部機種ではカメラ付きハンドマイクを使用して画像通信を簡単に行うことが可能です。

VoIP で世界とクリアにつながる

アマチュア無線とインターネットが融合した音声交信 (VoIP) も行われています。

代表的なものは, JARL 430MHz帯と1200MHz帯に合わせて全国に約 250局設置している 「D-STARレピーター」です。

大きく変化したアマチュア無線界【1】~新通信方式登場とバンド拡張

これは大部分のレピーター局同士がインターネット 回線で接続しているので、最寄りのレピーター局を入 り口として,自分が希望する D-STAR レピーター (日 本全国はもちろん, 海外局へも可能) から “CQ” を出 すことが可能です。

D-STAR運用イメージ[2]
D-STAR運用イメージ[2]

近所に D-STAR レピーターがない場合も、無線機 にインターネット回線を接続することで、 自宅にいなが ら各地のD-STAR レピーターをモニターしたり 、 希望の D-STAR レピーターへアクセスして交信 を行うこともできます (対応機種, ソフトウェアなどに 条件あり)。

D-STAR運用イメージ[3]
D-STAR運用イメージ[3]

また,C4FM デジタル機と親和性が高い 「WIRES-X (ワイヤーズエックス)」 というシステムでは,個人やク ラブが「ノード局」というアクセスポイントを設置し, インターネット回線経由で専用サーバーに接続してい ます。

C4FM デジタルに対応した WIRES-X
C4FM デジタルに対応した WIRES-X

対応機種を使って近所のノード局にア クセスして遠距離交信を楽しんだり, サーバー上に設 置された「ROOM」 という会議室でおしゃべりを楽し むこともできます、

相次いだバンド拡張

バンド大幅拡張。 1.8MHz帯はSSBも出られるように!

SSBも出られる1.8MHz帯
SSBも出られるようになった1.8MHz帯

以前は、アマチュアバンドの1.8 (1.9) MHz帯が「狭いバンド幅でCW(連続波)しか運用できない」という印象が強かったため、アマチュア無線四級の資格者にはあまり関連がないと見られていました。

しかし、2020年4月21日の法令改正により、以前は1810〜1825kHzと1907.5〜1912.5kHzの合計20kHz幅だったバンドが、1800〜1875kHzと1907.5〜1912.5kHzの合計80kHz幅に拡大しました。

この変更により、SSB(単一側波帯)やAM(振幅変調)などの音声通信も可能となり、多くの局が活動を開始しました。

メーカーからもこの拡張した1.8MHz帯に対応する小型アンテナが発売され、移動運用する局も増えています。

大きく変化したアマチュア無線界【1】~新通信方式登場とバンド拡張

また、1.8MHz帯以外にも、2000年以降、多くのアマチュアバンドが拡張されたり新たに設定されたりしています。

特に注目すべきは2009年の変更で、7MHz帯がそれまでの7000〜7100kHzから7200kHzまでとなり、バンド幅が2倍の200kHzに拡張されたことです。

 

関連記事:【2023年最新版】アマチュア無線バンドプランが変更!令和5年9月25日施行の変更点は? はコチラへ

SHF 帯に注目が集まる

2400MHz帯以上のバンドでは、市販の無線機が少ないため、運用する局の数は限られています。

2023年7月のデータによると、1200MHz帯には79,306局が免許を受けているのに対し、2400MHz帯は5,452局のみです。

 

しかし、興味深いことに、5600MHz帯では免許を受けた局が6,928局と、2400MHz帯よりも多くなっています。

この増加は、2015年頃から始まった小型無人航空機(ドローン)を使ったFPV(ファーストパーソンビュー)飛行のために、海外製の画像送信ユニットを5600MHz帯のアマチュアバンドに改造して使用する人が増えたためです。

 

(左)コントローラー、(中)RFユニット、(右)10GHzトランスバーター
(左)コントローラー、(中)RFユニット、(右)10GHzトランスバーター

2023年夏には、アイコムから144/430/1200/2400/5600MHz帯(オプションユニットで10GHz、1.2GHz、4GHz帯にも対応)のオールモード無線機「IC-905」が発売され、SHF(超高周波)帯の各バンドに注目が集まるようになりました。

今後の活動の活性化が期待されています。

関連記事:IC-905、IC-905XG 144~10GHzオールモードトランシーバー (アイコム株式会社) 徹底解析!はこちらへ

まとめ:大きく変化したアマチュア無線界【1】~新通信方式登場とバンド拡張

今回は、最近アマチュア無線にカムバックした方、またこれから始めようとしている方々に向けて、大きく変化したアマチュア無線界【1】~新通信方式登場とバンド拡張など、今知っておくと便利な情報を網羅的にご紹介しました。
2023年秋のアマチュア無線界の現状を知っていただけたと思います。

【続編】大きく変化したアマチュア無線界【2】~運用スタイル変化とオンラインによる新サービス はこちらです。

 

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