モールス信号は、単純な点と線の組み合わせで情報を伝える伝統的な通信手段です。
そのシンプルさと効果的な設計により、小さな装置で遠距離通信が可能なため、非常時にも信頼性の高い通信方法として重宝されています。
また、音を言葉に変換するプロセスは独特の楽しさを伴い、アマチュア無線家に今も愛され続けています。
本記事では、モールス信号の歴史からその魅力、現代における活用法までを詳しく探り、高齢者から若者まで多くの方々に楽しんでいただける内容をお届けします。
モールス信号とは何か
モールス信号は、電信システムのために開発されました。
モールス信号の定義とその基本的な概念
モールス信号は、短点(・)と長点(ー)を組み合わせてアルファベットや数字を表現する伝統的な通信手段です。アマチュア無線や緊急通信で広く使用されています。
アマチュア無線での重要性
アマチュア無線においてモールス信号は、低電力で遠距離通信が可能なため、重要な役割を果たしています。
モールス信号は、サミュエル・モールスによって1837年に発明され、無線通信の基礎を築きました。音声通信が一般化するまでの間、無線通信の主要手段として海上や戦場での迅速な情報伝達に利用されました。
モールス信号は、通信衛星の登場や国際海事機関(IMO)の決定により、実用では使われていません。しかし、アマチュア無線や海上など特殊な用途では依然として重要な役割を果たしており、非常時の通信手段としても有効です。
また、モールス信号は、日本の日本アマチュア無線連盟(JARL)がユネスコの無形文化遺産に登録することを目標に掲げています。
モールス信号の歴史的な背景
発明と初期の使用
モールスと彼のチームは、電気のパルスを使用して紙テープに印を付ける機械を作りました。
1844年5月24日、モールスはワシントンからボルチモアへ向けて、「What hath God wrought?(※神は何をなし給うたのか?)」というメッセージを送信するデモンストレーションに成功しました。この成功はモールス信号の歴史的な一歩となりました。
国際標準化
モールス信号は当初、数字のみを含んでいましたが、すぐにアルフレッド・ベイルによって文字と特殊文字も含むように拡張されました。
1851年のベルリンでの会議で、フリードリヒ・ゲルケの改良を基に国際モールス信号が標準化され、1865年に国際電信会議で採用されました。.
サミュエル・モールスとその発明
サミュエル・フィンレイ・ブリース・モールスは、1791年4月27日にアメリカ合衆国で生まれました。
モールスは初め、画家としてのキャリアを歩んでいましたが、後に電信の発明に着手します。1837年9月4日、ニューヨーク大学で現在のものと全く異なった符号で電信実験を行いました。
ジョセフ・ヘンリーの指導を受けて改良した符号と電信機に関する特許を1840年6月20日に取得しました。
歴史的な使用例と重要性
タイタニック号の沈没事故でのモールス信号の使用
モールス信号は歴史的な使用例でもその重要性を示しています。特に、タイタニック号の沈没事故でのSOS救難信号の使用は有名です。
イギリスの豪華客船「タイタニック」は、処女航海中の1912年4月14日深夜、カナダのニューファウンドランド島沖で氷山に衝突し、翌4月15日未明に沈没、海底に沈みました。
2,200人を超える乗船者のうち、およそ7割にあたる約1,500人が犠牲になった事故は、当時の海難事故の最大死者数となり、世界に大きな反響を及ぼしました。
氷山に衝突した直後から船体が沈む瞬間まで、時間にして約2時間半の間、タイタニックの電信士はモールス符号「SOS(・・・ーーー・・・)」を打ち続けたところ、ニューヨークから地中海に向けて航行していたイギリスの客船「カルパチア」が遭難信号を受信し、現場へ急行して711人を救出しました。
SOS信号は「・・・ — — — ・・・」と表現され、世界共通の救難要請信号として広く使用されています。
ところで、「世界で最初にSOSを発信したのはタイタニック」だと、一般的に言われていますが、実は、タイタニックの事故の3年前、1909(明治42)年8月11日にアメリカの汽船「アラパホ」が航行中にプロペラシャフトを損傷し、遭難信号SOSを発していました。
アラパホ号の事故の翌日、新聞各紙がアラパホ号のSOS発信(全員救出)を伝えています。
しかし、タイタニック沈没事故の犠牲者の多さや衝撃が大きかったため、アラパホ号の事故は忘れ去られてしまったようで、タイタニックが最初にSOSを打電した船との思い込みが生じたものと思われます。
戦時下でのモールス信号の使用
戦時下でもモールス信号は重要な役割を果たしました。第二世界大戦では、モールス信号は秘密通信や緊急通信に広く使用されました。ノイズの多い環境や弱い信号状態でも受信可能なため、信頼性の高い通信手段として重宝されました。
今に繋がるモールス信号の魅力
シンプル・効果的な設計
モールス信号の魅力は、そのシンプルで効果的な設計にあります。小さな出力と小さなアンテナで遠くまで簡単に通信が可能であり、特に緊急時の信頼性の高い通信手段として依然として重要な役割を果たしています。
音が言葉に聞こえる不思議な現象
モールス信号は、人間の脳が音を言葉に変換する不思議な現象を体験することができます。
モールス通信を多くやっていると、ブザー音の「トン・ツー」が言葉に聞こえるようになってきます。人間の脳ってとっても不思議ですね。最初の頃は、一文字ずつ聞き取っていた音も、だんだん単語に聞こえ、そのうち言葉に聞こえてきます。
さらに日本語のモールスは「耳元でささやいている」様に聞こえるそうです。残念ながら私はそこまでにはなっていません。
遠くまで簡単に届くモールス通信
モールス通信の特徴の一つが大変よく遠くまで届く事です。小さな出力、小さなアンテナで多くの仲間と通信する事が出来ます。この特徴のおかげでアマチュア無線ではモールス通信が今なお盛んにおこなわれています。
無線機を簡単に作って楽しめる
無線機を自作して楽しむには、モールス用の無線機は打って付けです。他の通信手段に比べ無線機を作る事が簡単なのです。少量の部品で作った無線機でも実用になります。
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モールス信号を送る為のスイッチ「キーヤー」
モールス信号を送るには、専用のスイッチを用います。大きく分けると、押し下げるタイプと横向きになって2つのスイッチが付いたタイプがあります。
昔ながらの押し下げるタイプ(左)は、映画やドラマでもよく見ますよね。横向きのタイプ(右)は、簡単な電子回路と組み合わせて右スイッチを押すとツー(長い符号)、左を押すとテン(短い符号)が出て、きれいな符号を素早く送る事が出来ます。この他にも多くのモールス送信用のスイッチ(キーヤーという)があります。
世界共通語
モールス符号のアルファベットは、世界共通です。「A~Z 0~9」と訳語を覚えれば世界中と交信できます。
また和文(日本語)「いろはにほへと~ 50音」 の符号もあります。日本人同士で楽しい世間話にはもってこいです。
誰の信号か分かる不思議なモールス通信
モールス通信は、ブザー音だけなのですが、送信者の「くせ」が出るものです。何度も聞いていると、「あーこの人また出ているな」などわかる様になるのです。人の脳は音に対して詳細に聞き分ける能力が有る様で、Net上でよくある「成りすまし」は出来にくいかもしれません。
まとめ
モールス信号はその歴史と魅力を持つ伝統的な通信手段です。サミュエル・モールスの発明から現在まで、多くの歴史的な使用例を通じてその重要性を示しています。
現代でもアマチュア無線や特殊な用途で広く使用されているモールス信号は、簡単で信頼性の高い通信手段として今でも多くの人に愛されています。