「アマチュア無線の世界で、いつかはCW(モールス信号)で交信してみたい…」多くのハムが抱く憧れではないでしょうか。しかし、モールス信号の覚え方が分からなかったり、一度挑戦したけれど挫折してしまったりした経験はありませんか?
この記事では、モールス信号の覚え方に悩む初心者の方に向けて、挫折しないための具体的な学習ステップを7つに分けて徹底解説します。定番の学習法から、スマホで使える便利な練習アプリ、さらには自衛隊式の訓練法まで、あらゆる角度からあなたのモールス信号習得を強力にサポートします。この記事を読めば、あなたも憧れのCWデビューを果たすことができるでしょう。
なぜ今、モールス信号(CW)が人気なのか?その魅力とメリット

音声やデータ通信が主流の現代において、なぜ古典的な通信手段であるモールス信号、通称「CW(Continuous Wave)」が今なお多くの無線家に愛され、人気を集めているのでしょうか。その背景には、他の通信モードにはない独特の魅力と、実践的なメリットが存在します。
少ないパワーでも遠くまで届く!DX通信に強いCW
モールス信号の最大のメリットは、その通信効率の高さにあります。音声通信(SSBモードなど)と比較して、CWは非常に狭い周波数帯域しか使用しません。
そのため、同じ送信出力でもエネルギーが集中し、微弱な電波でも遠くまで届かせることが可能です。これは、海外の無線局との交信、いわゆる「DX通信」において絶大な威力を発揮します。1Wや5WといったQRP(小電力)運用でも、地球の裏側と交信できるチャンスが広がるのは、CWならではの醍醐味と言えるでしょう。
混信に強く、聞き取りやすい
ノイズや混信が多いコンディションの中でも、モールス信号の「トン」と「ツー」というシンプルな音は、人間の耳にとって非常に聞き分けやすいという特性があります。
音声では何を言っているか分からないような状況でも、CWなら信号をコピーできるケースは少なくありません。この混信除去能力の高さが、コンテストや移動運用など、多くの局がひしめき合う場面で大きなアドバンテージとなるのです。
言葉の壁を越える世界共通のコミュニケーション
モールス信号は、アルファベット、数字、記号が世界共通の符号で定義されています。そのため、お互いの言語が分からなくても、「CQ(不特定の相手を呼び出す符号)」や「599(非常に明瞭であるという信号レポート)」といった世界共通の略符号を使えば、基本的なコミュニケーションが成立します。
言葉の壁を越えて、世界中の人々と繋がれるグローバルな魅力も、CWが多くの人々を惹きつけてやまない理由の一つです。私(ja3cgz)も、初めて海外局とCWで交信できた時の感動は、今でも忘れられません。
【挫折しない】モールス信号の覚え方7つのステップ

モールス信号の学習で最も重要なのは、「符号を音として覚える」ことです 。文字と符号の形(・-・-)を視覚的に結びつけてしまうと、高速な信号を聞き取ることが非常に難しくなります。ここでは、音から覚えることを基本とした、挫折しないための7つの学習ステップをご紹介します。
ステップ1:まずは音に慣れる!聞き流しから始めよう
本格的な学習に入る前に、まずはモールス信号の音そのものに耳を慣らすことから始めましょう。YouTubeやアプリなどで、実際の交信や練習用の音源をBGMのように聞き流すだけで構いません。
この段階では、符号の意味を理解する必要は全くありません。「トン」と「ツー」のリズムや響きを、心地よい音楽のように感じることが目的です。通勤・通学中や、家事をしながらなど、日常生活のスキマ時間を使うのがおすすめです。
ステップ2:基本のアルファベットを「音」で覚える(符号化法)
いよいよ本格的な学習のスタートです。しかし、ここで焦ってはいけません。まずは、AからZまでのアルファベット26文字に絞って、一つずつ確実に覚えていきましょう。
重要なのは、前述の通り「音」で覚えること。例えば「A」なら「ト・ツー」、「B」なら「ツー・ト・ト・ト」という音のリズムそのものを頭にインプットします。このとき、語呂合わせ(A: 合図、B: 勉強不足など)を使う「符号化法」も有効ですが、最終的には語呂合わせを介さずに、音が直接文字に変換される状態を目指しましょう。
ステップ3:数字と記号を追加する
アルファベット26文字をマスターしたら、次に0から9までの数字と、「.(ピリオド)」、「,(カンマ)」、「?(クエスチョンマーク)」などの基本的な記号を覚えていきます。
数字や記号はアルファベットに比べて符号が長いものが多いですが、ここまで来たあなたなら、音のリズムとして捉える感覚が身についているはずです。焦らず、アルファベットと同じ要領で一つずつ覚えていきましょう。
ステップ4:アプリやサイトで受信練習(ヒアリング)を繰り返す
符号をある程度覚えたら、次は実践的な受信練習に移ります。ここで大活躍するのが、スマートフォンアプリやウェブサイトです。これらのツールは、ランダムな文字や単語をモールス信号で再生してくれるので、ゲーム感覚でヒアリング能力を鍛えることができます。
最初はゆっくりとしたスピードから始め、正答率が上がってきたら徐々にスピードを上げていくのが効果的です。この反復練習が、あなたの受信能力を飛躍的に向上させます。おすすめのアプリについては後ほど詳しく紹介します。
ステップ5:パドルや電鍵を使って送信練習(キーイング)
受信(ヒアリング)と並行して、送信(キーイング)の練習も始めましょう。実際にパドルや電鍵を操作して符号を打つことで、符号のリズムがより深く身体に染み付きます。
エレキー(エレクトリック・キーヤー)のパドル操作は、短点と長点を自動で生成してくれるため初心者にもおすすめです。最初は正確な符号を打つことを意識し、慣れてきたら受信練習と同じようにスピードを上げていきましょう。自分の打った符号を録音して聞き返してみるのも、上達への近道です。
ステップ6:略符号(Q符号など)を覚える
実際の交信では、コミュニケーションを効率化するために様々な略符号が使われます。特に「Q符号」と呼ばれる3文字の符号は必須知識です。
例えば、「QTH?」は「あなたの所在地はどこですか?」、「QSO」は「交信」、「QRZ?」は「誰か私を呼びましたか?」といった意味になります。これらの略符号を覚えることで、実際の交信内容が格段に理解しやすくなり、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
ステップ7:実際に交信してみる!CQを出してみよう
ここまでのステップをクリアしたら、いよいよ実践です。アマチュア無線の世界では、不特定の相手を呼び出すことを「CQを出す」と言います。
最初は緊張するかもしれませんが、勇気を出して「CQ CQ CQ DE JA3CGZ JA3CGZ K」のように、自分のコールサインを付けて呼びかけてみましょう。誰かから応答があった時の喜びは、何物にも代えがたい経験となるはずです。最初はゆっくりとしたスピードで、定型的な挨拶の交換からで全く問題ありません。失敗を恐れず、まずは一歩を踏み出すことが何よりも大切です。
モールス信号学習におすすめのアプリ&サイト3選

スマートフォンやPCを使えば、いつでもどこでもモールス信号の練習が可能です 。ここでは、数あるツールの中から、特におすすめのアプリとサイトを厳選して3つご紹介します。これらのツールを活用して、効率的に学習を進めましょう。
1. Morse Mania (iOS/Android)
「Morse Mania」は、ゲーム感覚でモールス信号の受信練習ができる大人気のアプリです。アルファベットから数字、記号、略符号まで、レベルに合わせて段階的に学習を進めることができます。
文字が画面上部から落ちてくる前に正しいキーをタップするというシンプルなルールで、夢中になって練習しているうちに、自然と受信スピードが上がっていきます。間違えた文字を繰り返し出題してくれる機能もあり、苦手克服にも最適です。
2. A1A Breaker (Webサイト)
「A1A Breaker」は、ブラウザ上で動作する非常に高機能なモールス信号練習サイトです。欧文(アルファベット)だけでなく、和文(カタカナ)のモールス符号の練習にも対応しているのが大きな特徴です。
ランダムな文字の受信練習はもちろん、好きなテキストを入力してモールス信号に変換・再生させることも可能です。スピードやトーンの調整も自由自在で、初心者から上級者まで、幅広いレベルの学習者に対応しています。 詳細はコチラへ: https://a1a.jp/
3. LCWO.net – Learn CW Online (Webサイト )
「LCWO.net (Learn CW Online)」は、世界中のモールス信号学習者が利用している有名なオンライン学習プラットフォームです。コッホ・メソッド(Koch Method)と呼ばれる、高速な符号音から学習を始める効率的な訓練法を採用しています。
アカウントを登録すれば、自分の学習進捗を記録し、世界中のユーザーと受信速度を競うこともできます。モチベーションを維持しながら、本格的にハイスピード受信を目指したい方には最適なサイトです。 詳細はコチラへ: https://lcwo.net/
ちょっと変わった覚え方?自衛隊式の訓練法とは

より実践的で、高速な受信能力を身につけるための訓練法として、自衛隊やプロの通信士が用いる方法も参考にしてみましょう 。これらの方法は、正確さとスピードを極限まで高めることを目的としています。
ペンマンシップ:音を聴きながら書き取る訓練
ペンマンシップは、流れてくるモールス信号を、意味を考えずにひたすら紙に書き取っていく訓練法です。頭で翻訳するのではなく、耳で聞いた音に手が自動的に反応する状態を目指します。
最初はゆっくりとしたスピードで、一文字ずつ丁寧に書き取ることから始めます。慣れてきたら徐々にスピードを上げ、最終的には高速な信号でも手が追いつくようにトレーニングを重ねます。この訓練により、受信の自動化が進み、長時間の受信でも疲れにくくなります。
暗語受信:意味のない文字列で脳を鍛える
実際の単語や文章ではなく、意味のないランダムな5文字のアルファベットの組み合わせ(暗語)を受信する訓練も非常に効果的です。
意味のある単語だと、前後の文脈から次の文字を予測してしまいがちですが、暗語ではそれができません。一文字一文字を正確に聞き取る集中力が要求されるため、受信能力の基礎を徹底的に鍛え上げることができます。多くの練習アプリやサイトにも、この暗語練習モードが搭載されています。
まとめ:モールス信号は「習うより慣れよ」が上達の鍵!
この記事では、モールス信号の覚え方について、挫折しないための7つのステップやおすすめのアプリ、さらには自衛隊式の訓練法まで、幅広く解説しました。最も重要なポイントは、符号を文字や形で覚えるのではなく、「音のリズム」として身体に染み込ませることです。
最初は難しく感じるかもしれませんが、毎日少しずつでも音に触れ、アプリなどでゲーム感覚で練習を続けるうちに、ある日突然、符号が意味のある言葉として頭に入ってくる瞬間が訪れます。まさに「習うより慣れよ」の世界です。
今回ご紹介したステップを参考に、ぜひあなたもモールス信号の世界に飛び込んでみてください。そして、いつか空の上で、CWでお会いできる日を楽しみにしています。73(さようなら)!


