アマチュア無線は、空間を超えてコミュニケーションを取る魅力的な趣味です。しかし、日本のように住宅スペースが限られている場所では、大きなアンテナの設置が難しいことがあります。まして、アマチュア無線の目標の一つに『DXCC』がありますが、そのための大規模なアンテナはなかなか実現が難しいのです。
本記事では、限られたスペースでもアマチュア無線を充分に楽しめるコンパクトダイポールアンテナにスポットを当て、その設計、多機能性、及び運用テクニックについて詳細に説明します。狭いエリアでもアマチュア無線の醍醐味を味わうための重要な知識と情報を提供することが目的です。
最近では、コンパクトダイポールアンテナの分野も、メーカーのラインナップが充実してきているので、限られたスペースにでもDPが設置出来るので、DXCCなどコンテストにも十分に挑戦できる様になってきています。
この記事を読むことで、コンパクトダイポールアンテナの代表的な商品が分かり、自宅の無線局での活用に繋げることが期待されます。
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市販の多バンド型・短縮型ダイポールアンテナ
ダイポールアンテナはその魅力にもかかわらず、日本の住宅事情にはなかなか馴染まないことが多いです。特に都市部では、スペースの制限によりフルサイズのダイポールアンテナの設置が困難です。このような住環境の制約や、移動運用の際のスペースの問題を解決するために、全長が短いモデルや複数のバンドに対応したモデルなど、様々な短縮型や多バンド型のダイポールアンテナが開発されて購入することが出来る様になりました。
市販されている多バンド型や短縮型のダイポールアンテナは、大きく分けると次の様になります。
- ワイヤーダイポールアンテナ
- V型ダイポールアンテナ
それぞれのメリットとデメリット、実際に使っている例も紹介したいと思います。
ワイヤーダイポールアンテナ
[1]ワイヤーアンテナのメリット
- 構造がシンプル
- 耐入力が比較的大きい
- 台風や降雪着雪にも十分耐える
- 軽量のため被害も軽微
- メンテナンス性も高い
- エレメントの開き角が90度以上なら、融通が利く
- 逆V型やエレメントを曲げるなど自由度が高い
[2]ワイヤーアンテナのデメリットや注意点
- アンテナの向きを変えるのが困難
- 土地や環境の制約のため望む方向に設置出来ないことが多い
- エレメントを地面や金属などに接触させないこと
- 電波の輻射の妨げになるものから離すこと
- 仮設置の状態で中心周波数などの調整を行うこと
[3]市販の多バンド短縮型ワイヤーDP
市販されている代表的なアンテナをご紹介します。
[1]多バンド型短縮DP
Comet CWA-1000 HF帯ダイポールアンテナセット /3.5/7/14/21/28MHz 耐入力500W(PEP)
[2]1.9MHz帯をカバーするDP
ダイヤモンドアンテナ W719 HF帯 7MHz MF帯 1.9MHz 2バンドダイポールアンテナ
[3]WARCバンドをカバーするDP
サガ電子 MT-WARC マルチバンド逆V ダイポールワイヤーアンテナ バラン付
アマチュア無線 短波帯の周波数で、10/18/24MHzの割り当てを特に”WARC”バントと呼びます。
これは、1979年の”WARC会議”にて新たにアマチュア無線業務へと割り当てが決定し、その後1990年に実際に開放されました。
WARCバンドは、アマチュア無線での新たな可能性を開いたと言えるでしょう。特に、18MHzと24MHzのバンドは、コンディションが良い時には21MHzよりも遠くまで通信できることがあり、海外局との交信においても弱い信号でもコールバックを得られることが魅力的ですね。
実際に、WARCバンドはアクティブな局が多くないと思われがちですが、スポラディックE層が発生すると、特に18MHzと24MHzは活発になることが観測されています。
V型ダイポール
[1]V型ダイポールアンテナの構造
軽量バランによる給電点から、アルミ等の金属パイプ製のエレメントがV型に伸びています。
短縮コイルは、エレメントの途中や給電点近くに配置されているものが多いです。
3.5MHzや7MHzなどの低い周波数では比較的短縮率が大きくなるものの、エレメント全長が片側5m程に抑えられており、それをV型に配置しているため、回転半径が小さく取り回しが良くなっています。
屋根や屋上、ルーフバルコニーなどに設置しやすく、特に都市部や住宅地でのHF帯運用には、心強いタイプです。
[2]V型ダイポールアンテナのメリット
- エレメントが金属ロッドのため、マストポール1本で自立式設置ができる。
- 再現性が良く。調整もしやすい
- 設置スペースの節約ができる
- 低い給電点地上高でも設置が可能(2~4m程度から可能)
- 軽量で伸縮可能な移動運用に適したタイプも発売されている
[3]購入前に確認したいポイント
- 耐入力
100w、200w、それ以上の出力の運用の場合は、要チェック
PEPは尖頭電力なので、CW/FMやFT8の場合は、十分な余裕が必要です。 - 使用可能帯域幅
短縮率が大きいコンパクトアンテナは、VSWRが、1.5以下の実用的な値に納まる周波数幅が狭い特徴があります。3.5MHzや7MHzでは、バンド全体をVSWRを1.5以下に納めるのは困難です。CW中心の運用を中心に調整するなどの工夫が必要です。
コイルを電動可変型にして手元のリモコンで調整できるといったコンパクトVDPもあります。(第一電波工業 HFV330) - バンド切替方式
コイルを使って多バンド化しているVDPでは、バンドの切替方も重要です。一度調整すればあとは何もせずに各バンドに出られるものもありますが、バンド毎に用意されたコイル付きエレメントを追加したり、取り替える必要があるタイプもあるようです。
[4]組み立て時の注意とコツ
- 常設する場合は、ジョイント部に導電グリスを塗布する
- 防水のための自己融着テープやビニールテープを巻く
- 施工中の事故や設置後の倒壊などには十分な注意が必要
[5]市販されているV型ダイポールアンテナ
市販されているV型ダイポールアンテナを3タイプに分けて紹介します。
[1]小型マルチバンドVDP
第1電波工業 HFV5/コメットCHV-5α
端から端までの全長が約4m、重さも3kg未満
第一電波工業 HFV330
このタイプの最高級グレード(ローディングコイルの巻き数を電動で変化/3.5MHz~28MHz帯に対応させている。)
[2]標準サイズ マルチバンドVDP
クリエートデザイン330V-1A
エレメント長11.4m、回転半径4.1m(90°時)3.5~50MHzの6バンド対応
ナガラ電子工業 TV-416J
エレメント長10.63m、回転半径3.82m(90°時)7~50MHz帯の5バンド対応
[3]モノバンドVDP
ラディックスからさまざまなサイズのモノバンドVDPが発売されています。
7/14MHz用の2バンドVDPもラインナップされています。
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人気のV型アンテナの使用感と実際
これまで、CQ誌などに掲載されていた使用レポートを、できる限りご紹介させて頂ます。
ラディックスRD-S106
バンド毎に用意されている別売のコイルとマッチングケースを交換することで、7MHzから24MHzまでの各バンドにも対応、合計8バンドにオンエアーできる優れものです。中心周波数の調整はアルミロッドの蝶ナットを緩めて伸び縮みさせます。
実は、このRD-S106、筆者が2012年に開局した時、いろいろとカタログを眺めて最初に手に入れたHF用のアンテナです。その後機会に恵まれ2013年2月に1ヶ月、小笠原諸島の父島と母島に滞在し、無線三昧の日々をこのVDPとともに過ごし、50wの出力、主にCWで日本国内はもとより世界中の局と合計1,300交信を達成しました。
バンドチェンジ毎にアンテナを設置させてもらった宿のベランダに上がっていき、調整の際はベランダとシャックを行ったり来たり、宿の皆さんから「大忙しだね」と笑われてしまいました。
一方、そんな背景もあり、運用は頻繁なバンドチェンジをせず、毎日じっくりと腰を据えて行うスタイルに、朝は、7MHzからスタートし、正午に向けて10MHz、14MHz、18MHzと上がっていき、午後は14MHz、10MHzと下がって7MHzで「定位置に戻る」が日課でした。
《引用:執筆は、CQ誌2024年3月号 JH1JDJ 上岡沙織》
★ ポータブル運用に最適! 軽量で収納サイズは最小で 58㎝
エレメントは、振出式( 一部差込式 )で蝶ボルト付き。設営や撤収に工具等は必要ありません。
収納寸法は 58 ㎝ ,重さは 約1.2㎏( 基本セットとベースコイル1本の合計 )と超軽量コンパクト。
ボストンバックやリュックにも収納できます。
★ エレメントの先端にハットエレメントを採用
ハットエレメントの採用で、効率を損なわずに、狭い場所に設置ができます。
エレメント長は片側 約2m、ハットエレメントの長さは 50㎝×2 です。
★ カメラの三脚にも取付可能
垂直マストや手すり等の水平部分はもちろん、カメラの三脚Iにも直接取付られます。
クリエートデザイン730V-1A
筆者は、2023年のJARD HAMtte交信パーティ、無2023年夏と10月の全市全郡コンテストに、730V-1を使って、東京都文京区千石lCQ出版社本社ビルから参加しました。骨太のしっかりした造りのVDP、耐入力も7MHzはPEPで1kW、14MHzから上は2kWと十分です。エレメントは11.6mと、良好な性能を発揮してくれました。運用前のメンテナンスと再組み立ては会議室と屋上を使って行いましたが、間近で見るとなかなかの迫力。
印象的なのは、使用可能帯域幅が広く、一時調整してしまえばアンテナチューナーでマッチングをとる必要もなかった点、やはりアンテナ設置後の日常的な運用において手軽であることは、とても重要ですね。
《引用:執筆は、CQ誌2024年3月号 JH1JDJ 上岡沙織》
★ 拡張整合器BS41の搭載で、7MHzをフルバンドカバーできます。
★ BS41はリレーコントロール方式で7.0~7.2MHz全帯域フルカバー。
730V-1W (7,14,21,28MHz) \72,160.
730V-1AW (7,14,21,28,50MHz) \78,760.
※耐入力は標準モデル730V-1xに同じ。
730V-2W (7,21,28MHz)\65,780.
730V-2AW (7,21,28,50MHz) \72,380.
※耐入力は標準モデル730V-2xに同じ。
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まとめ
私たちの住環境は多様で、それぞれのアマチュア無線家が直面する課題も異なります。この記事を通じて、限られたスペースの中でもダイポールアンテナを最大限に活用し、アマチュア無線の楽しみを広げることができたなら幸いです。
コンパクトながらも高い性能を持つダイポールアンテナが、あなたの無線ライフをより豊かにする一助となれば、これ以上の喜びはありません。無線の世界での新たな発見と冒険を心からお祈りしています。
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Originally posted 2024-04-16 19:59:53.