この記事は、電波伝搬の全体像を解説した親記事「【完全版】アマチュア無線の電波伝搬と宇宙天気予報:太陽活動(SSN/SFI)がHF・VHFコンディションに与える影響と読み方」および、異常伝搬対策をまとめた「【完全版】アマチュア無線の電波障害・異常伝搬対策ガイド:地磁気嵐・ノイズから通信回復までの実践ノウハウ」の関連記事です。
「今夜の14MHz帯でヨーロッパは聞こえるだろうか」「週末の移動運用、何時にどのバンドへ出ればDX(遠距離交信)が狙えるだろう」——HF帯で通信を楽しむ際、誰もが直面するのが「いつ・どのバンドで・どこに電波が届くのか」という予測の難しさです。
かつてはベテラン局の経験則や勘に頼る部分が大きかった電波伝搬の予測ですが、現在はPCやスマホから誰でも無料で使える高度な電波伝搬シミュレーター(VOACAPやHF-STARTなど)が存在します。これらを使いこなすことで、現在の太陽活動(SFIやSSN)や自身のアンテナ設備・送信出力に合わせた「最適な周波数と時間帯」を科学的に弾き出すことが可能になります。
📌 この記事の重要ポイント(結論)
- 電波伝搬シミュレーターを使えば、狙ったエリアと交信できる「ベストな時間帯・周波数」を科学的に把握できる。
- 世界基準の「VOACAP Online」で通信信頼度(REL%)を把握し、国内環境にはシンプルな「HF-START」を活用するのがおすすめ。
- リアルタイムの宇宙天気指標(SFI/K指数)と組み合わせることで、シミュレーションの予測精度が飛躍的に向上する。
🎯 この記事はこんな方におすすめです
- 狙った国や地域(DX)と交信できる「ベストな時間帯・バンド」を事前予測したい方
- VOACAP OnlineやHF-STARTの操作方法やグラフ(REL値やMUF)の見方を知りたい方
- 自分の送信出力やアンテナの利得を入力して、よりリアルな通信確率をシミュレーションしたい方
加藤/JA3CGZ電波伝搬シミュレーターとは?導入するメリット



短波(HF)帯の電波は、上空の電離層(主にF2層)で反射しながら地球の裏側まで届きます。しかし、電離層の状態は「季節・時間帯・太陽活動(SFI/SSN)」によって刻一刻と変化するため、「昨日の同じ時間は飛んだのに今日は全くダメ」ということが頻繁に起こります。
電波伝搬シミュレーターを活用する最大のおすすめメリットは以下の3点です。
- 無駄なワッチやCQを減らせる:開けていない時間帯にいくらCQを出しても空振りになります。オープンする確率が高い「黄金の時間帯」をピンポイントで狙えます。
- コンディションに応じた最適な周波数(バンド)が選べる:7MHz、14MHz、21MHzなど、どの周波数が一番安定して相手に届くかが一目でわかります。
- 設備(パワー・アンテナ)の違いによる到達可能性がイメージできる:5WのQRP運用と100W運用でどれくらい受信信号強度(Sメーター)が変わるのかを事前に予測できます。


電波伝搬シミュレーターを活用する3つのメリット
定番シミュレーター1:VOACAP Online(世界基準の予測ツール)



HF帯の伝搬予測ツールとして世界で最も広く使われているのがVOACAP(Voice of America Coverage Analysis Program)です。元々は米国の国際放送(ボイス・オブ・アメリカ)のために開発されたプロ仕様の計算エンジンで、現在はWebブラウザ上で直感的に使える「VOACAP Online」として無料公開されています。
VOACAP Onlineの基本操作ステップ
使い方はとてもシンプルです。ブラウザでサイト(voacap.com)にアクセスし、以下の手順で設定します。
- 送信点(TX)と受信点(RX)を指定する:マップ上で自分の運用位置(TX)と、交信したい相手国・地域(RX)をクリックまたはドラッグして設定します。
- 運用年月と送信パワーを設定する:上部のメニューから運用する「月」を選び、送信出力(10W, 50W, 100W, 1kWなど)を選択します。
- アンテナ種別を選択する:ダイポール、2エレ八木、3エレ八木など、使用するアンテナに近いタイプを選びます。


VOACAP Onlineの基本設定と表示の見方
VOACAPの表示結果の見方(REL%とMUF)
設定を完了すると、24時間のタイムチャートと周波数帯ごとのカラーチャートが表示されます。ここで特に注目すべき指標はREL(Circuit Reliability:回路信頼度)です。
- REL 80%〜100%(赤・赤紫色):通信確率が非常に高く、快適な交信が期待できるベストコンディション。
- REL 40%〜70%(緑・黄色):交信できる可能性はあるが、シグナルが弱かったりフェージング(変動)が大きくなるエリア。
- REL 0%〜30%(青・黒):電離層の反射条件が合わず、電波が届かない時間帯・周波数。
チャートの「一番赤くなっている時間と周波数」を狙って無線機の電源を入れるのが、VOACAP活用の王道テクニックです。
定番シミュレーター2:HF-START(国内で人気のシンプルツール)



「VOACAPは設定項目が多くて英語だから難しそう」と感じる方におすすめなのが、日本国内の運用環境に最適化されたシンプルシミュレーター「HF-START」や、NICT(情報通信研究機構)のリアルタイム電離層データを組み合わせた予測ツールです。


日本語で直感操作できるHF-STARTの活用イメージ
HF-START(簡易ツール)の強み
- 日本語表示・シンプルな入力フォーム:複雑なパラメーターを入力しなくても、自局のグリッドロケーター(GL)やエリアを選ぶだけでサクッと予測が出せます。
- 国内DX・近距離伝搬の目安にも使える:海外DXだけでなく、7MHz帯での国内スキップ(近距離不感地帯)の発生有無や、1.8MHz/3.5MHz帯の夜間飛来予測にも便利です。
シミュレーター数値を実運用に活かす実践テクニック



シミュレーターはあくまで「平均的な電離層モデル」に基づいた計算値です。実際の運用では、最新の「宇宙天気(SFI/K指数)」と組み合わせて判断することで、予測精度が飛躍的に高まります。
1. SFI(太陽フラックス)が高い日の補正法
SFIが150〜200を超えるような太陽活動活発期は、シミュレーターの予測(REL値)よりも高い周波数帯(21MHz・28MHz)が早く開き、遅くまでオープンし続ける傾向があります。シミュレーターで「黄色(50%)」と出ていても、SFIが高い日は十分DXと交信可能です。
2. K指数(地磁気乱れ)が高い日の注意点
逆に、地磁気嵐が発生してK指数が4や5以上に跳ね上がっている日は、シミュレーターで「赤(100%)」と表示されていても、極圏通過ルート(北米や北欧方向)の電波が強く減衰(電離圏負相嵐)することがあります。シミュレーターの赤表示を過信せず、K指数の静穏度を必ず併せて確認しましょう。


シミュレーター値×宇宙天気の補正テクニック
※地磁気嵐が及ぼす影響については、関連記事「【子1-2】地磁気嵐が7MHzコンディションに与える影響と対策」で詳しく解説しています。
よくある質問(FAQ)
まとめ:シミュレーターを相棒に効率よくDXを楽しもう



電波伝搬シミュレーター(VOACAPやHF-START)は、見えない電離層の状態を「可視化」してくれる強力なツールです。
- VOACAP Onlineを使えば、時間帯・周波数ごとの通信確率(REL%)が一目で把握できる
- 自分のアンテナや送信出力(W)に合わせたリアルなシミュレーションが可能
- リアルタイムのSFI・K指数(宇宙天気)と組み合わせることで予測精度がさらに向上する
「運任せのワッチ」から「科学的な狙い撃ち」へ。シミュレーターをぜひ日々の運用に取り入れて、効率的なDXハンティングやコンテスト運用を楽しんでみてください!
電波伝搬や異常伝搬のメカニズムをより深く知りたい方は、ぜひ以下の関連ガイドもチェックしてみてください。







