「アマチュア無線を仕事に使うな!」―総務省が2026年2月5日に公開した、これまでにない直接的なメッセージを込めたアニメーションCMが、無線愛好家の間で大きな話題を呼んでいます。なぜ今、国はこのような強いトーンで注意喚起に踏み切ったのでしょうか?
本記事では、スキー場や工事現場で後を絶たない不法運用の実態と、インバウンド観光客がもたらす新たな電波環境の課題を深掘りし、すべての無線ファンが再確認すべき「正しいルール」の重要性を考察します。
総務省が本気を出した?異例のアニメCMで注意喚起

2026年2月5日、総務省北海道総合通信局は、公式YouTubeチャンネルで2本のアニメーションCMを公開しました。これは、アマチュア無線の適正な利用を呼びかけるためのもので、その内容は非常に直接的かつ具体的です。
1本目のCM「アマチュア無線を仕事に使ってはいけません!」では、「デンパ君」というキャラクターが「仕事で無線を使う場合は、デジタル簡易無線(登録局)、IP無線、特定小電力無線等の使用をご検討ください」と、明確に代替手段を提示しています。背景には札幌の象徴である大通公園とテレビ塔が描かれており、親しみやすい雰囲気とは裏腹に、そのメッセージは断固としたものです。
さらに注目すべきは、同時に公開された2本目のCM「海外から持ち込んだトランシーバーの使用注意」です。こちらは英語のタイトルとナレーションで、「海外から持ち込んだトランシーバーの使用は、日本の電波法に違反する可能性があります」と、増加するインバウンド観光客に向けて注意を促しています。
これは、近年の社会情勢を的確に反映した、新しい形の啓発活動と言えるでしょう。総務省が、単なる国内の愛好家だけでなく、海外からの訪問者にも目を向け、多角的なアプローチで電波秩序の維持を図ろうとする強い意志の表れと考察できます。
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なぜ今、注意喚起なのか?後を絶たない「3つの不法運用」
今回のCM公開の背景には、アマチュア無線の不法運用が後を絶たず、その手口が多様化・深刻化している現状があります。特に問題となっているのが、以下の3つのケースです。
①【スキー場】インバウンド観光客による「外国規格無線機」の無自覚な使用
北海道のニセコをはじめとする国際的なスキーリゾートでは、外国人観光客が仲間との連絡のために、自国から持ち込んだトランシーバーを使用するケースが急増しています。これらの無線機の多くは、北米で一般的なFRS(Family Radio Service)やGMRS(General Mobile Radio Service)といった規格のもので、日本の技術基準に適合していません。
これらの電波が、国内のテレビ放送や消防・救急無線といった重要な通信に混信・妨害を与える事例が報告されており、社会的な問題となっています。観光客の多くは悪意なく使用しているため、事前の周知と啓発が急務とされています。
②【工事現場・イベント】常態化するアマチュア無線の「業務利用」
アマチュア無線は、電波法で「金銭上の利益のためでなく、専ら個人的な無線技術の興味によって行うもの」と定義されています。しかし、建設現場での重機誘導、大規模イベントでのスタッフ連絡、警備業務など、本来は業務用の無線機を使用すべき場面で、アマチュア無線機が安易に流用されるケースが常態化しています。2026年には、北海道で除雪作業にアマチュア無線機を使用していたとして、事業者が摘発される事例も発生しまし
コスト削減や手軽さから行われるこれらの行為は、明確な電波法違反であり、厳しい取り締まりの対象となっています。



③【全般】ルールを知らない?知ってて破る?悪質な違反者たち
上記のケース以外にも、無線従事者の資格を持たずに運用する「無免許運用」や、許可された出力を超えるハイパワーな電波を出すための「違法改造」など、悪質な違反も存在します。これらの違反者は、他の無線通信に深刻な妨害を与えるだけでなく、電波秩序そのものを脅かす存在です。総務省は、全国に設置した電波監視システム「DEURAS(デューラス)」などを活用し、24時間体制で電波を監視しており、違反者に対しては厳格な姿勢で臨んでいます。


知らなかったでは済まされない!電波法違反の重い罰則
「少しだけなら」「みんなやっているから」という軽い気持ちで行った不法運用も、発覚すれば厳しい処分が待っています。アマチュア無線の不適切な使用は、単なるマナー違反ではなく、電波法という法律に違反する犯罪行為です。
電波法では、不法に無線局を開設・運用した場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」という重い罰則が定められています。さらに、違反が業務に関連して行われた場合、その行為者本人だけでなく、指示した法人(会社や団体)も罰せられる両罰規定が適用される可能性があり
実際に、不法運用が発覚し、無線従事者免許の停止といった行政処分を受けるケースも少なくありません。「知らなかった」では済まされない、非常に厳しいルールであることを、すべての無線利用者が認識する必要があります。



まとめ:正しい知識で楽しもう!クリーンな電波環境のために
今回、総務省が公開した2本のアニメーションCMは、一部の違反者への警告であると同時に、すべてのアマチュア無線愛好家に対する「ルールの再確認」を促すメッセージでもあります。アマチュア無線は、電波という限られた公共の資源を、多くの人が共有することで成り立つ趣味です。だからこそ、一人ひとりが法律とルールを遵守する高い倫理観を持つことが求められます。



もし仕事で無線通信が必要なのであれば、デジタル簡易無線(登録局)や特定小電力無線、IP無線機など、用途に応じた適切な業務用無線機が数多く存在します。
今回のCMをきっかけに、自らの無線運用がルールに則ったものであるかを見つめ直し、正しい知識と責任ある行動で、クリーンで健全な電波環境を守っていくこと。それが、この素晴らしい趣味を未来へと繋いでいくために、今、私たち一人ひとりに求められていることではないでしょうか。



