最近のアマチュア無線の傾向は、ベランダをアンテナ設置のベースとする方が増えているそうです。ハムの高齢化が進み体力も気力も「さすがにもう、自分ではちょっと・・・」と感じるようになり、若い頃に屋根の上に設置したルーフタワーを撤去して、ベランダ利用のこじんまりしたアンテナ系にダウンサイジングする方が増えているのかも知れません。
あるいは、昨今どんどん威力を増大させている夏場の台風や突風、竜巻、頻発する線状降水帯と落雷、このような自然災害から命や財産を守るためにダウンサイジングを考える方がおられることも考えられます。
そのような中、最近の人気のHFアンテナはどんなものになっているのでしょうか?CQ誌2023年5月号に特集があったこともあり、調べて見ました。
関連記事➡CQ ham radio23年5月号”特集~コンパクトに楽しむ”HFアンテナのお役立ちガイド”
売れ筋は、ダウンサイジング・アンテナ
アマチュア無線局のアンテナ設備というと、立派なタワーに大型の八木アンテナを取付、ローテーターで方向を合わせて、DXを楽しむというスタイルが主流でした。
しかし、恵まれた環境とお住まいなら実現可能ですが、このような環境がなかなか恵まれるモノではありません。
実際は、制限のある環境の中でも、比較的軽量コンパクトな設備でも運用して楽しんでおられるハムの方が圧倒的多数ではないでしょうか。
最近の売れ筋をネットで調査してみました。
- V型ダイポール(VDP)
- モノバンドモービルホイップ
- 屋外型オートアンテナチューナー(ATU)
このように比較的手軽に設置出来るアンテナがよく売れているそうです。
比較的軽量コンパクトというメリットの上、さらにマルチバンドにオンエアーできる点がうけているようです。
つまり、ベランダにも設置してそこそこ運用が楽しめる出来る「ダウンサイジング・アンテナ」が、今日のアンテナの売れ筋になっているようです。
ベランダ設置アンテナ
アンテナのベースをベランダにすることの利点、ベランダに設置に適したアンテナについて調べて見ました。
ベランダ設置アンテナの利点
ベランダにアンテナを設置する利点としては、まず、設置コストを抑えることができることが挙げられます。アンテナそのものもサイズが小さくなるので、コストが下がります。
通常の屋根上などの高所などの作業の場合には、設置が一人ではできないのでどなたかにお願いするなどでの人件費が必要です。また「高所作業費」などの別途工事料金がかかる場合がありますが、ベランダにアンテナを設置することで、そのような費用を抑えることができます。
メリットをまとめて見ました。
- 設置コストを抑えることができる。
- 屋根やタワーに上ることなく安全に設営・メンテナンスできる。
- 部屋から横移動で簡単アクセスできる
- 屋根や壁面がスッキリする。
ベランダ設置に適したアンテナ
アマチュア無線家の方がベランダにアンテナを設置することが増えているようです。
ベランダにアンテナを設置する方法はいくつかあります。例えば、ベランダの手すりにVダイポールを設置する方法や、ベランダ床から2m程度のマストに取り付ける方法などがあります。
最近人気があるベランダ設置に適したアンテナは次のようなものがあります。
- V型ダイポール(VDP)
- モービルホイップ(ベランダ設置運用)
- ATU+つり竿エレメント
人気のアンテナNo.1~V型ダイポール(VDP)
V型ダイポール(VDP)とは?
V型ダイポールアンテナは、ダイポールアンテナの一種で、エレメントを水平ではなく垂直に対して角度をつけたものです。この形がアルファベットのVの字に見えることから、この名前がついています。V型ダイポールアンテナは、軽量でコンパクトなので、マンションや移動運用に最適です。単純な構造であるため、調整が簡単です。
V型ダイポールアンテナは、2本のエレメントをV字型に組み合わせたアンテナで、中央にバラン(平衡器)を挟んで使用します。それぞれのエレメントは、片側1/4波長の長さを持ち、給電部で左右対称になっています。また、V型ダイポールアンテナは、ダイポールアンテナと同じように水平方向に広がる放射パターンを持ちます。
V型ダイポール(VDP)のメリット・デメリット
V型ダイポールアンテナのメーカー製品は、エレメントが金属ロッドを試用しているモノが多いので、アンテナの調整が簡単です。また価格が安く調整が簡単なのが最大のメリットです。
v型ダイポールアンテナは、アンテナポールを建物の壁に沿うような形に設置しても十分実用になるようです。もちろん壁から離した状態と比較して、効率は悪くなりますが壁の影響を受けにくくなる利点があるようです。
V型ダイポールアンテナは、水平ダイポールから左右のエレメントをバンザイ型にしたために、打上角が上がります。HF帯では電離層反射が基本ですから、打上角が高くてもQSOに問題ありませんし、かえって国内QSOには好都合です。Eスポにも良いかもしれません。しかし、グラウンドウェーブの信号が弱くなるので50MHz帯には向かないようです。
関連記事➡ダイポールアンテナの特性・原理についてはコチラです。
- 地上高が稼げるため地表の構造物の影響を受けにくくなる
- 調整が簡単である
- 建物の壁に沿うような形にしても十分実用になる
- 価格が比較的安い
- 打上角が大きいため、Eスポ、国内QSOに有利
- 打上角が大きくなるので、グランドウエーブを利用する50MHz帯は不利
-
V型ダイポールアンテナには、特に不得意なことはありません。ただし、アンテナの形状や設置場所によっては、電波の反射や干渉が発生する可能性があるため、設置場所や形状に注意する必要があるとされています。
小型マルチバンドVDP
最近、よく売れているアンテナを2つ紹介します。
第一電波工業HFV5
商品情報 ●周波数:7/14/21/28/50MHz帯 |
この商品はローディングコイルが片側5本…
この商品はローディングコイルが片側5本で350gと軽くてバランスが取りやすいのが特徴だと思います7,14,21,28,50MHzのショートVダイポールで意外とSWRも調整しやすいのではないかと思います、やはり短縮ダイポールアンテナの為共振帯域幅は狭いようです、そこを我慢すれば1本で5バンドのQSOが出来ます、狭帯域データや狭帯域電話等共振周波数帯を決めて調整すれば使えます。私は28MHz帯ローディングコイルと差し替えに18MHzを入れ込みました。
小型軽量で組み立て簡単、ベランダ設置も…
小型軽量で組み立て簡単、ベランダ設置も容易。 余り目立たなく、そんなにアクティブでは無い自分には向いているアンテナ。 1エリアに居ますが韓国語、中国語もたまに聞こえる。 局面の申請中のため送信はまだできませんがどこまで届くか楽しみ。
コメットCHV-5α
従来のCHV-5に14MHz帯エレメントが追加され、14MHz帯と18MHz帯を選択して取り付けできるようになりました。 |
商品説明 【仕様】 |
アパマンハムには重宝するアンテナです。
21年ぶりにカムバックしてHFで主にFT8で運用してます。6階建てマンションの5階ベランダ(角なのでベランダに屋根なし)に手すりとアルミの物干し竿を利用して床から2mほどの高さに設置しています。(地上高15m程)
nanoNVAを使いそれぞれの周波数においてエレメントを少しづつカットしながら調整をおこないました。壁に近いためSWRは思ったほど落ちませんでしたが、Rig(IC-7300M)内臓のオートアンテナチューナーを使用することでRigのSWR計では1.0まで下がります。
フルサイズのダイポールや八木アンテナにはかないませんが、設置面積が狭いのに7~50MHzまでアンテナ切替なしで一応運用することができるのはアパマンハムには重宝します。 コンデションが良ければDXも可能で、18、21、28MHzではFT8でヨーロッパ、アジア、北米、南米、アフリカ、オセアニアと交信することができました。
まぁまぁ使えるアンテナだと思います
2階ベランダに設置して固定用で使用する為に購入しました。これからハイバンドは聞こえなくなる為先ずは7MHzを設定しましたが、SWRが1.5以下の帯域が20KHz程度しかなくてミリ単位のエレメントの出し入れでの調整が必要です。
自分が運用したい周波数に合わせて無線機内蔵のオートアンテナチューナーで約70KHz幅ではSWRも落ちてくれました。 これまでコメット社のUHV-9の垂直系マルチバンドアンテナとカウンターポイズを使っていましたが、受信ではSが1つ程度アップした様な感じです。
飛びはコンディション次第かなと思います。ノイズも少し減ったかなとは思いますがそう大きな差異は無いと思います。 来年のシーズン前には他のバンドのエレメント調整もしたいと思います。でも、エレメント全部は取り付けないで必要最小限を使う予定です。
その他のVDP
その他、国内メーカーから発売されている小型VDPで、マルチバンドのアマチュア無線局用のアンテナとしては、以下のものがあります。
1. ダイヤモンドアンテナ CP6R
2. ナガラ電子工業 NA-771
3. ダイヤモンドアンテナ CP-5HS
また、MFJ社からも様々なサイズが発売されています。
1. MFJ-1786
2. MFJ-1835
3. MFJ-1622
4. MFJ-1625
5. MFJ-1621
標準サイズマルチバンドVDP
クリエート・デザイン330V-1(50MHz付きは330V-1A)
330Vはトラップ式とリレーコントロール方式のハイブリッド型5-バンドV-ダイポールアンテナです。 チャンネル切換には約13VDC電源とリモート用7芯ケーブルが必要 |
7/18/21/28/50MHz 5バンド 角度可変型ダイポールアンテナ (14MHzオプションコイル同梱) |
4-バンド多チャンネル型のV-ダイポール「730V-1W」と、多くのDXer・コンテスターにも長年親しまれてきた3.5/3.8MHz
帯ダイポール「CD78Jr」の魅力を1台に凝縮したもので、以下の特徴を備えています。
● CD78シリーズ等で長年実績あるCD独自のリレーコントロールカップラ方式を採用。3.5/3.8MHz帯は5-CH、
7MHz帯は3-CH、14, 21, 28MHz帯は各4-CHに切換えて、それぞれのバンドで広帯域運用が可能。
● 3.5, 7MHz共にエレメントの先端までフルに駆動する方式なので7MHzも輻射効率が高くアルモウェルド製高効率化
Tハットエレメントとの相乗効果で高い輻射効率を実現。
● 高耐圧Hi-Qトラップ等の採用による高い耐電力。
● 回転半径を小さく、かつ屋根や地面(低地上高)の影響を軽減できるV型エレメント(標90°/ 130°可)構造。
都市部や集合住宅等、設置環境に制約が多い場所にてローバンド~ハイバンドまで幅広くQRVしたい方にも最適 。(税込特価)。
7MHzSSBでの交信が多くなりました。
国内も3.5はCWだと聞こえていれば応答があり7MhzはSSBでも応答率がたかく、ベントダブルバズーカとほぼ変わらない感じでした。値段は高かったですがとにかく1本のアンテナで5バンドにQRVでき使える帯域も広いので気に入っています。耐電力が比較的大きいのがよい。
ナガラ電子工業TV-416J
【特徴】 |
商品情報 【仕様】 |
ナガラ電子のTV-416jを使い始めて半年。凄さを実感してます。
ナガラ電子のTV-416jをグランドプレーンと併用して使っていて、どちらも良いアンテナです。グランドプレーンで受信が厳しい時に、V型ダイポールに切り替えると、受信出来る場合があります。
送信も同じで、グランドプレーンではピックアップして貰えない場合、V型でピックアップして貰えたりします。もちろんその逆もあります。ナガラ電子の場合、アンテナの調整がそれほど大変では無いので意外とあっさり組み立てが出来ます。現在では、昼間は国内交信が盛んですが、夜は海外が入感するので、楽しいハムライフを満喫しています。
モノバンドVDP
モノバンドVDPで、今人気の高いアンテナは次のアンテナです。
ラディクスRDL-4015G
【仕様】 周波数帯 : 7MHz帯/21MHz帯 型式 : 短縮型 1/2λ ダイポール インピーダンス : 50Ω VSWR : 1.5以下(fo:中心周波数において) バンド幅 : 35KHz(7MHz)/450KHz(21MHz) 最大入力 : 250w(SSB/CW)/150w(All Mode) エレメント長 : 約5.3m(片側) 収納寸法 : 1,420mm 重量 : 2.7Kg 受風面積 : 0.13㎡ 耐風速 : 瞬間最大風速 30m/sec. 適合マスト : φ32mm~φ60mm 備考 : 上記仕様は RD-BL/G 使用時です |
★ 大きさは、片側約 約 5m のロングサイズ
当社RDL-シリーズと同等の長さです。7MHz帯はセンターローディング、21MHz帯はフルサイズV型ロータリー・ダイポールです。
★ 移動運用に最適! 収納サイズは 約1.8m (ベースユニット取付時)
エレメントは、各段差込式(5段)で、蝶ボルトで接続します。
収納時、各段を外しますと 約1.8m、更にベースユニットを外すと約 1.4m と短くなり乗用車でも運べます。
エレメントの伸縮や取り外しに工具等は必要ありません。(注:ベースユニットの取り外しにはスパナが必要です)
短時間で設営が可能、しかもマスト1本で設営できますのでタイヤベースとベスト・マッチです。
★ 7MHz帯はバンド拡張 (7.00~7.20MHz) に対応!
【注意】RDL-4015Gはエレメントのみです。ご使用には別途バラン・マウントセット(製品名:RD-BL か、RD-BL/G が必要です。
RDL-Gタイプ用のペースユニット(製品名 RDL-BU80 RDL-BU40 RDL-BU30)はご利用できません。
有限会社ラディックスは、ほぼアマチュア無線オンリーの、アンテナ会社さんです。
人気のアンテナ[2]モービルホイップ(ベランダ設置運用)
モービルホイップは、自動車に取り付けて運用するために開発、設計されたアンテナですが、ベランダに設置して手軽にHF帯でオンエアーすることが可能です。
アパマン住まいのハムの場合は、VDPや八木アンテナなど大がかりなアンテナの構築は困難ですので、モービルホイップがおすすめです。ステンレスロッドを採用した製品が多いので、折れ曲がりにくくサビにも強くて安心です。
ただし、自動車の車体に当たるような良好なアースを取る工夫が必要です。そして、クルマに設置する前提で作られているので、条件がかなり異なります。ベランダ設置に適合するような調整が必要になります。
ベランダ設置にも使いやすい、人気のあるモービルホイップをご紹介します。
第一電波工業 HV7CX
7/(※10/14)/21/28/50/144/430MHz帯高能率モービルアンテナ 【仕様】 ※10/14MHzはオプションエレメント使用時 |
第一電波工業 HF40FXW
第一電波工業 HF40FXW |
7MHz帯コンパクト高能率モービルアンテナ(3段ディストリビューテッド方式採用)《新バンドプラン対応》RoHS 【仕様】 ※このアンテナは車のボディをアースとして使用するので、基台とボディを完全に導通させてください。 |
モービルホイップをベランダに設置する場合の注意点
- 耐入力に注意
- チューナーの併用がお勧め
特にCWやデジタルモード(FT8やFT4)で使用する場合は、連続送信になるので特に耐入力に注意しましょう!
また、モービルホイップは、SWRが低い周波数幅が比較的狭い場合が多いので、念のためアンテナチューナーを併用することをおすすめします。
人気のアンテナ[3] ATU+つり竿エレメント
性能の良い屋外型オートアンテナチューナー(ATU)が販売されています。外国製も有りますが、ここでは日本製の2製品を比較して見ました。
【仕様】 使用可能周波数 :(20m以上のワイヤー) 1.8~54MHz (7m以上のワイヤー)3.5~54MHz (2.5m以上のワイヤー)7~54MHz 入力インピーダンス : 50Ω 最大入力電力 : 100W (連続3分間) 整合後 SWR : 2.0:1以下 (ワイヤー長が1/2λの整数倍では使用できません。) チューニング可能電力 : 4~60W チューニング時間 : 最大8秒以内 マッチングメモリー : 200個 電源電圧 : 13.8V DC ±15% (トランシーバーより専用ケーブル内で供給) |
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200マッチングメモリ HF/50MHzオートアンテナチューナー FC-40 寸法(縦×横×奥行) : 228×175×55mm (突起物を除く)/重量 : 約1.2kg
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【特徴】 |
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【仕様】 |
アイコム、屋外設置型オートアンテナチューナー「AH-730」 寸法 :230x340x80mm(突起物含まず)/重量: 約2.5kg
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【特徴】 高速チューニング:約2~3秒のハイスピードで自動的にチューニング動作を完了します。また、整合状態をメモリー(最大45ch)に記憶することが可能。さらにカウンターも内蔵しており、同一周波数で再度チューニングをする場合は、わずか約1秒で整合をとることができます。 |
どちらの商品の説明にもありますが、7m以上のワイヤーを使用すると、なんと3.5MHz~54MHzのアマチュア無線局用バンドで整合が取れそうです。
このATUを利用すると、任意長の電線またはエレメントとアース線を併用することで、HFのほとんどのバンドにオンエアーすることが出来るということでする。
任意長の電線は、最近ではグラスファィバー製のつり竿をそのままエレメントに利用したり、7mほどの電線をつり竿にはわせて、ベランダから突き出すなど、様々な方法が考えられます。実験好きのハムにとっては、遊べること間違い無しですね。
ATUのベランダなどでの活用方法については、下記に詳細が掲載されていました。
ATU FC-40の活用方法(YAESU無線)はコチラです。
ATU+つり竿エレメント
ATU+ロングワイヤーエレメント
関連記事➡飛びが悪いロングワイヤーアンテナを「よく飛ぶアンテナ」にする方法
【サガ電子工業】AW-2.8 (AW2.8) アンテナワイヤー【22m】➡ 販売先はコチラ
【サガ電子工業】AW-3.5 (AW3.5) アンテナワイヤー【22m】 【SA-055KA】➡ 購入はコチラ
【サガ電子工業】AW-2.8 (AW2.8) アンテナワイヤー【42m】➡ 購入はコチラ
【サガ電子工業】AW-3.5 (AW3.5) アンテナワイヤー【42m】 【SA-054KA】➡ 購入はコチラ
まとめ:人気のHFアンテナは?~サイクル25をマルチバンドで楽しむために
フルサイズのアンテナに比べると、ダウンサイズしたアンテナは、なにかしら一段難しい部分があり、どちらかというとベテラン向けになります。
つまり、あれこれ調査・測定したり、調整を繰り返したりして、試行錯誤が必要となる場合が多くなってしまいます。だからこそ、すんなりいかないからこその楽しみを味わうこともできるかも知れません。
サイクル25の好期にこそできる、ダウンサイジング=コンパクトな設備でハムを楽しんでみるのもおすすめです。
次回は、「アンテナ設備に役立つアイテム」をいろいろ紹介してみたいと思います。