JA3CGZは大阪豊中市に開設するアマチュア無線局です。20年ぶりに電子申請でカムバックしました。このブログはアマチュア無線の話題を投稿していきます。

アマチュア局の非常通信対策:災害時に備えるための設備と準備

近年、地震や台風などの自然災害が頻発しており、非常時における通信手段の重要性がますます高まっています。災害は予期せず、突然私たちの生活に混乱をもたらします。

そのような状況では、信頼性の高い通信手段が生命を救うことがあります。特に、電力供給や携帯電話ネットワークがダウンした場合、アマチュア無線局が非常に重要な役割を果たします。

アマチュア無線局は、災害時における情報の伝達と救援活動の調整に不可欠なツールとなります。この記事では、アマチュア無線局がどのように非常通信に対応し、災害時にどのように備えるべきかについて詳しく説明します。

本記事では、アマチュア局の非常通信対策について、災害時に備えるための設備と準備について詳しく紹介しています。

非常通信とは

電波法での非常通信とは?

非常通信とはどんなものでしょうか。改めて電波法を確認してみました。

アマチュア局の非常通信対策:災害時に備えるための設備と準備 非常通信とは
「地震、台風、洪水、津波、雪害、、火災、暴動その他非常の事態が発生し、または発生する恐れがある場合において、公衆通信回線を利用することが出来ないか、利用が極めて困難である時に、人命の救助、災害の救援や交通通信の確保、または秩序の維持の為に行われる無線通信を言います。(法52条4号)」

アマチュア局の非常通信対策:災害時に備えるための設備と準備 通信方法
「連絡を設定するための呼び出しまたは応答は「非常」を3回前置きして行う。(運131)」

アマチュア局の非常通信対策:災害時に備えるための設備と準備 取扱いの停止
「非常通信の取扱を開始した後、公衆通信の状態が復旧した場合は速やかに停止する。(運136)」

アマチュア局の非常通信対策:災害時に備えるための設備と準備 訓練のための通信
「訓練のために行う通信は、呼び出しまたは応答に際して「訓練」を3回前置きして行う。(運135条の2)」

*上記簡略してありますので、原文については電波法令抄録の関係条文を参照ください。

アマチュア局による非常通信の考え方

アマチュア局による非常通信の考え方

災害時には通信インフラが寸断されることが多いため、アマチュア無線は非常通信の重要な手段となります。
非常通信を行う際には、信頼性、耐久性、操作性を考慮し、適切な場所に無線機を設置することが大切です。

非常通信確保のためのガイド・マニュアル

総務省の非常通信協議会が公表した「非常通信確保のためのガイド・マニュアル」は、非常通信に関連する重要な情報を提供しています。

アマチュア無線は、ボランティアとして非常通信を行う柔軟性を持ち、災害時に有効に活用できます。

ここに関連資料のメニューを掲載しておきます。

非常通信に関する基本方針 ならびに 非常通信実施要領

アマチュア無線局の非常通信マニュアル

アマチュア無線局の非常通信マニュアル

アマチュア局の非常通信対策:災害時に備えるための設備と準備

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アマチュア局の非常通信対策:災害時に備えるための設備と準備

アマチュア無線 非常通信

上記のマニュアルなどについて詳しく解説をしてくださっている動画がありました。
 印旛沼無線クラブ(JS1YDH)チャンネル をご紹介しておきます。

 

アマチュア局の非常通信対策

災害時におけるアマチュア局の非常通信対策は、以下の要素に注目することが重要です。

1. 無線機の選定と設置

災害時の非常通信において、無線機は最も重要な要素の一つです。選定する際には、信頼性、耐久性、そして操作性を考慮しましょう。

非常通信専用の4.630MHz帯があり、有線通信が不可能な場合にアマチュア無線局が使用できます。その他にも、非常通信用周波数が各バンドにも設定されていますので、通信相手先との距離などに応じた通信可能な周波数帯が違うので、無線機はできるだけ多い周波数帯をカバーしておきたいところです。

周波数帯や空中線電力の観点からも、適切な設備を準備し、効果的な非常通信を実現しましょう。

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jarl-newbandplanico

2. 電源の確保(バッテリー、ソーラーパネルなど)

電源は無線機を動作させるために不可欠です。災害時には電力供給が途絶える可能性が高いため、アマチュア局では独自の電源を用意する必要があります。
例えば、最近著しく性能が向上しているポータブル電源を利用することで、継続的な通信が可能となります。さらに、長時間の運用のためには、ソーラーパネルや発電機を用意しておくことも有効です。

アマチュア局の非常通信対策:災害時に備えるための設備と準備
当局で準備しているポータブル電源/PowerArQ社

写真は、当局でずいぶん以前に購入したポータブル電源です。コンセントからは、100v3A(300wH)が出力できます。USB(5V)やシガ-ライター(12V)の出力端子も持っているので、スマホの充電や、12Vの無線機には直接給電もできます。
しかし、無線機と照明などで、合計100v・1A(100w)を出力するならば3時間弱しか使えません。これでは大した運用などはできないので、更に大きい出力のポータブル電源がほしいところです。また、長時間の運用のためには、ソーラーパネルまたは、発電機を準備したいと思っています。

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3. アンテナの選び方と設置

アンテナは、無線通信の品質と範囲を大きく左右します。災害時には建物や構造物が倒壊する可能性があるため、平常時に運用しているアンテナの日常点検の他、移動運用などで利用している釣り竿アンテナなどの垂直偏波アンテナやワイヤーアンテナなど、臨時設置できるアンテナも準備しておくことが望ましいです。

非常用品の準備

災害時には、アマチュア無線家は自己責任で活動することが求められます。そのため、非常用品の準備も重要です。例えば、非常食や飲料水、防災グッズなどを備えることで、長時間の通信活動にも備えることができます。

緊急用のライトやヘッドランプ

災害時には、電力供給が途絶える可能性があります。そのため、緊急用のライトヘッドランプは必須のアイテムです。これらのライトは、暗闇の中でも作業を続けることを可能にします。また、ヘッドランプは両手を自由に使えるため、特に便利です。

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ノートや筆記用具

災害時には、情報を記録したり、メッセージを伝えたりするために、ノート筆記用具が必要になることがあります。特に、無線通信が不可能な場合や、バッテリーが切れてしまった場合に備えて、これらのアイテムを準備しておくことをお勧めします。

飲料水や非常食

最後に、飲料水非常食は、生命を維持するために絶対に必要なアイテムです。災害時には、飲料水や食料の供給が途絶える可能性があるため、これらを常に備えておくことが重要です。非常食は長期保存が可能で、調理不要のものを選ぶと良いでしょう。

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運用のポイント

災害時の運用ルールと注意点

災害時の無線通信は、通常の運用とは異なるルールが適用されます。まず、非常時優先の原則を理解し、緊急通信が必要な場合はその通信を優先させることが重要です。また、無線通信は他のユーザーとの共有リソースであるため、必要最小限の通信時間を心掛け、他のユーザーに配慮することが求められます。

非常通信の方法

●例えば、当局JA3CGZが無線電話により非常通信を行うため「CQ呼出し」を行う場合は・・・

非常 非常 非常 CQ (3回)  こちらはJA3CGZ どうぞ

と送信します。

これを受信したJA1AAA局が応答する場合は・・・

非常 非常 非常 JA3CGZ(3回くらい繰り返す)  こちらはJA1AAA(3回くらい繰り返す) どうぞ

と送信します。

コンタクトがとれた場合は

非常通信の内容や場所等を簡潔に伝え関係方面への連絡を依頼します。

いつ、どこで、誰が、どのような状態かを慌てず正確かつ冷静に伝えることが重要です。

非常通信周波数の選定

バンドプラン(周波数の使用区別)で3.5MHz~1200MHzバンド内にJARLが非常用周波数と電波型式を定めています。
もちろん交信相手が見つかれば、バンドプランに従ってどの周波数を利用してもよいのです。

利用者が多い145.00又は433.00の呼出周波数が応答の確率が高いでしょう。
何度呼んでも応答がない場合は、周波数帯をワッチ(チャンネルを回す)して交信中の局に割り込むという方法もあります。交信中の局を見つけたら、送信から受信に移るタイミングに合わせて「ブレーク」と宣言します。
ブレークとは「送信を中断せよ」という命令です。その声が相手に届いていれば「ブレーク局どうぞ」と言いますから、非常事態が発生したことを説明してください。
アマチュア無線家は親切ですから非常通信に協力してくれると思います

<アマチュア無線 非常通信周波数>
3,535kHz  SSB/CW
7,050kHz  SSB/CW
14,300kHz  SSB/CW
18,160kHz  SSB/CW
21,360kHz  SSB/CW
28.20MHz  SSB/CW
50.10MHz  SSB/CW
51.50MHz  FM
144.10MHz  SSB/CW
145.50MHz  FM
430.10MHz  SSB/CW
433.50MHz  FM
1294.00MHz  SSB/CW
<アマチュア無線 呼出周波数・非常通信周波数>
51.00MHz  FM
145.00MHz  FM
433.00MHz  FM
1295.00MHz  FM

<アマチュア無線 デジタル呼出周波数・非常通信周波数>
51.30MHz  D-STAR(DV)/C4FM
145.30MHz  D-STAR(DV)/C4FM
433.30MHz  D-STAR(DV)/C4FM

<非常通信の連絡設定用周波数(総務省 周波数割当)>
4630kHz A1A
「A1A電波4630kHzの周波数は、非常通信の連絡設定に使用するものとし、連絡設定後の非常通信は通常使用する電波によるものとする。ただし、通常使用する電波によって非常通信を行うことができないか又は著しく困難な場合は、この限りでない」

非常通信の注意点

●非常通信の要件(条件)

非常通信は次の3つの要件が同時に満たされる場合の無線通信です。(法52条4号)
  1. 地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、また発生するおそれがあること。
  2. 有線通信を利用することができないか、またはこれを利用することが著しく困難であること。
  3. 人命の救助、災害の救援、交通通信の確保または秩序の維持のために行われること。
●他の者は傍受し通信を妨害してはならない。
通信相手が見つかってお互いに交信中は他の者は黙ってワッチしなければなりません。
法的にもそう決められています。
協力したい気持ちから、横から色々な情報を入れると通信が混乱し通報が遅れます。
また、依頼されたわけでもないのに、傍受した内容を自分勝手な判断で警察や消防に連絡すると情報が混乱します。
実はこのようなケースが最も多く、情報が錯綜して一つの事案が複数になったり、一つの現場に救助隊が重複することがよくあります。
決してお節介はしないことです

実際にあった非常通信の手順と交信内容を紹介

非常通信~私の体験

YouYubeで活躍しておられるJA5MNL氏の動画をご紹介しておきます。

大震災で活躍した”無線ボランティア” 頼りになるアマチュア無線

災害など非常時におけるアマチュア無線の役割についてお伝えします。阪神・淡路大震災では大勢のアマチュア無線家がボランティアで被災地に入り、大活躍しました。また、東日本大震災では孤立集落の情報をアマチュア無線家が発信し、それを大阪のアマチュア無線家がキャッチするなど、情報伝達の重要な担い手となりました。当時の緊迫したやり取りを交え、無線通信の凄さをお伝えします。

大震災と無線通信 頼りになるアマチュア無線(毎日放送の動画)
URLは、https://youtu.be/CHejkGieAwM

携帯電話の圏外で滑落事故発生! 無線仲間が救助要請!

六甲山系で滑落事故が発生し、滑落者の場所は携帯電話の圏外
幸い無線を持っていたので、SOSを発信
たまたま聞いていた無線仲間がソレを受信し消防に連絡

更にライフビーコンも持ってられた様で、迅速にヘリにて救助
そんな事が有りました

無線遊びも素敵やんって思えました
交信模様も少し交えながら、その辺りを話しています。

ライセンスフリー無線の実話です。アマチュア無線ではありませんが、非常通信にあたる通信の実例でしたので、ご紹介しました。

まとめ

この記事では、アマチュア局の非常通信対策について詳しく紹介しました。災害時に備えるためには、信頼性の高い無線設備、独自の電源、適切なアンテナ、そして非常用品の準備が必要です。アマチュア無線家は、自らの技術と準備を活かし、災害時に地域社会に貢献する重要な役割を果たすことができます。ぜひ、非常通信対策を整え、災害時に備えましょう。

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