アマチュア無線家にとって、まだ交信したことのない珍しい場所や地域(エンティティ)とつながることは、最高の喜びの一つではないでしょうか。普段は無線局がいない、あるいは極端に少ない場所からオンエアされる「DXペディション」は、世界中のDXer(DX愛好家)が注目するビッグイベントです。
この記事では、2025年に予定されている注目のDXペディションの最新情報や運用スケジュール、周波数をまとめてご紹介します。この記事を読めば、あなたも憧れのエンティティとの交信に成功するチャンスを掴めるかもしれません。
DXペディションの基本から、具体的な交信のコツまで、初心者の方にも分かりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
DXペディションとは?

そもそも「DXペディション」とは何なのでしょうか?これは、アマチュア無線家が、普段は無線局のいない無人島や、アマチュア無線活動がほとんど行われていない国や地域へ機材を持ち込んで遠征し、そこから世界中の局と交信を行う活動のことを指します。
無線用語で「DX」は遠距離通信を意味し、「エクスペディション(Expedition)」は遠征や探検を意味します。つまり、DXペディションは「DXのための遠征」そのものなのです。
多くのDXerは、ARRL(米国アマチュア無線連盟)が発行する「DXCCアワード」のように、世界の多くのエンティティ(国や地域)と交信することを目指しています。DXペディションは、そうしたアワードの完成を目指す上で、欠かすことのできない貴重な機会を提供してくれます。
DXペディションの歴史は古く、1920年代後半から1930年代にかけて、探検隊に同行した無線家が本国との長距離通信を行ったのが始まりとされています。その後、1948年にARRL元会長のロバート・W・デニストンが、アマチュア無線による通信を主目的とした遠征をバハマで実施したことが、現代的なDXペディションの起源となりました。
【2025年】注目のDXペディション最新情報

それでは、2025年に予定されている注目のDXペディション情報を見ていきましょう。世界中のDXペディション情報を集約している「Announced DX Operations」や「DX-World.net」の情報を基に、特に注目度の高いものをピックアップしました。
運用期間や周波数は変更される可能性があるため、最新情報を常にチェックすることが重要です。詳細は各ペディションの公式サイトや、以下の情報サイトでご確認ください。
【詳細はコチラへ】Announced DX Operations (NG3K)
| 期間 | エンティティ | コールサイン | 主な周波数帯 | 主なモード | QSL経由 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025/11/4 – 12/6 | アルバ | P40MC | 40m-6m | FT8, RTTY, CW, SSB | LoTW |
| 2025/11/14 – 12/8 | ウガンダ | 5X7W | 80m-10m | CW, FT8, FT4 | LoTW |
| 2025/11/23 – 12/5 | バヌアツ | YJ0GC | HF | CW, SSB, FT4, FT8 | YJ0QC OQRS |
| 2025/11/30 – 12/12 | セント・マーチン島 | TO9W | 160m-10m | CW, SSB, FT8, FT4 | LoTW |
| 2025/12/1 – 12/10 | モルディブ | 8Q7HT | 40m-6m | FT8 | LoTW |
| 2025/12/21 – 12/27 | バングラデシュ | S21DX | 160m-10m | SSB, FT8 | LoTW |
| 2026/2月予定 | ブーベ島 | 3Y0K | 全バンド | CW, SSB, Digital | 未定 |
特に、2026年に予定されている南大西洋の孤島「ブーベ島(3Y0K)」は、世界で最も交信が難しいエンティティの一つとして知られており、世界中のDXerから大きな期待が寄せられています。ブーベ島は南極海に浮かぶノルウェー領の無人島で、極めて過酷な気象条件と、アクセスの困難さから、過去にも数回しかDXペディションが実施されていません。
また、2025年4月には、ガラパゴス諸島からの大規模DXペディション「HD8G」が予定されており、22名から25名のオペレーターが7ヶ国から参加する国際的なプロジェクトとして注目されています。
DXペディションの楽しみ方と交信のコツ

憧れのDXペディション局と交信するぞ!と意気込んでも、相手は世界中から狙われている超人気局。そう簡単には交信できません。ここでは、DXペディション局を見つけ、交信を成功させるための基本的なコツをご紹介します。
DXクラスターで最新情報を掴む
まず、DXペディション局が今どの周波数で運用しているかを知る必要があります。そのために不可欠なのが「DXクラスター」です。これは、世界中のアマチュア無線家が「〇〇(コールサイン)が周波数〇〇kHzで聞こえる」といった情報をリアルタイムで共有するネットワークです。
ウェブサイトや専用ソフトでDXクラスターにアクセスすれば、お目当ての局がどこにいるか一目瞭然です。また、「DX-World.net」のようなニュースサイトも、ペディションの詳細な運用計画や最新ニュースを発信しており、必見です。
「パイルアップ」を制する者がDXを制す
珍しいDX局がオンエアすると、その周波数には世界中から無数の局が呼びかけ、まさにカオスのような状態になります。これを「パイルアップ」と呼びます。
このパイルアップの中から、自分の信号をDX局に拾ってもらうには、いくつかのテクニックが必要です。ただやみくもにコールサインを連呼するだけでは、まず交信できません。
重要なのは、DX局のオペレーターがどのように呼び出しを受け付けているかを、よく聞いて理解することです。「Listening 5 to 10 up」「Japan only」「North America」など、DX局からの指示を正確に把握し、それに従って呼び出すことが成功への近道です。
スプリット運用を理解する
パイルアップを効率的に捌くため、ほとんどのDXペディション局は「スプリット運用」を行います。これは、DX局の送信周波数と受信周波数を分ける方法です。
例えば、DX局が「Listening 5 to 10 up」とアナウンスした場合、DX局は14.200MHzで送信し、14.205MHzから14.210MHzの範囲で受信(聞いている)するという意味です。この場合、あなたは14.200MHzを受信し、空いている14.205MHz〜14.210MHzのどこかで自分のコールサインを送信する必要があります。DX局と同じ周波数で送信しても、絶対に聞いてもらえません。
DX局のアナウンスをよく聞き、どの周波数を聞いているのかを正確に把握することが、交信成功への第一歩です。また、無線機のスプリット機能を事前に習熟しておくことも重要です。
FT8モードの活用
近年、デジタルモードのFT8がDXペディションでも広く使われるようになりました。FT8は微弱な信号でも交信が成立しやすく、言語の壁もないため、初心者にもおすすめのモードです。
ただし、FT8でもパイルアップは発生します。DXペディション局が「DXpedition Mode」を使用している場合は、通常とは異なる運用方法になるため、事前に理解しておくことが大切です。
【ja3cgz.comより】日本国内のDXペディション情報

海外だけでなく、日本国内でも魅力的なDXペディションは行われています。特に、小笠原諸島(JD1)は、本土とは異なるエンティティとして扱われるため、多くのDXerにとって重要な交信対象です。
2025年9月には、東京大学アマチュア無線クラブ(JA1ZLO)が、小笠原諸島の父島と母島から「JA1ZLO/JD1」として運用を予定しています。HF帯から430MHz帯まで、幅広いバンドでのオンエアが計画されており、私(ja3cgz)も非常に楽しみにしています。このような国内のペディションは、海外の珍局を狙うのとはまた違った楽しさがありますね。
【詳細はコチラへ】小笠原DXペディション 2025 運用予告 – JA1ZLO Web
運用予定は以下の通りです。
- 父島: 2025年9月21日(日)〜9月22日(月)
- 母島: 2025年9月22日(月)〜9月24日(水)
- 周波数帯: HF、144MHz、430MHz
- モード: Phone(SSB)、CW、FT8
- QSL: 原則として当局が発表しているQSLポリシーに則る。LoTW、運用後予定でClub Logにアップロード予定。
小笠原諸島は東京から南に約1,000km離れた太平洋上の島々で、世界自然遺産にも登録されている美しい場所です。国内からのアクセスは定期船「おがさわら丸」のみで、片道約24時間かかるため、気軽に行ける場所ではありません。だからこそ、このようなDXペディションは貴重な機会となります。
まとめ
この記事では、2025年のDXペディション最新情報と、その楽しみ方や交信のコツについて解説しました。DXペディションは、私たちアマチュア無線家にとって、日々の運用では味わえない興奮と達成感を与えてくれる特別なイベントです。
珍しいエンティティとの交信は、決して簡単なことではありません。しかし、しっかりと情報を集め、適切な機材とテクニックを駆使すれば、道は必ず開けます。
あなたもこの記事を参考に、ぜひ憧れのDXペディションとの交信にチャレンジしてみてください。そして、交信が成功した暁には、忘れずにQSLカードを請求しましょう。その一枚のカードが、きっとあなたの一生の宝物になるはずです。
最新のDXペディション情報は、NG3KやDX-World.netなどの情報サイトで随時更新されていますので、こまめにチェックすることをおすすめします。また、JARLのDXニュースや、各種アマチュア無線雑誌でも詳しい情報が掲載されています。
73 de JA3CGZ


