2024年1月1日、能登半島地震が発生しました。被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます。
世界で起きているマグニチュード6以上の地震の約2割を占めると言われる地震多発国・日本。発生からまもなく7年目を迎える熊本地震では、災害関連死を含めて270人以上が亡くなり、県内で20万棟近い住宅が被災するなど大きな被害を出したことも記憶に新しいです。
日本には、近い将来に発生する可能性が高い巨大地震がいくつも存在します。その中でも特に被害が大きいとされている南海トラフ地震、千島海溝・日本海溝の地震、首都直下地震は、30年以内に60〜70パーセントの確率で起こると予測されているのです。
災害発生時、通信インフラが機能不全に陥る中で、アマチュア無線がいかに重要な役割を果たすかは、これまでの数々の災害が証明しています。
特に2011年の東日本大震災では、アマチュア無線局が人命救助や災害救援のための非常通信を実施し、その貢献は計り知れません。
この記事では、アマチュア無線局による非常通信の考え方、実施例、そして総務省やJARLによる非常通信の指針やマニュアルをご紹介しています。
災害対策としてのアマチュア無線の活用体制の重要性を再認識し、日ごろからの準備の大切さを共有することを目的としています。
アマチュア局による非常通信の考え方
平成23年(2011年)3月11日に発生した東日本大震災では、多数のアマチュア局が、地方自治体に協力するなどして、被害情報の収集や安否情報の伝達等、人命の救助や災害の救援等のための非常通信を実施し、社会的に大きな貢献をしました。
非常通信をアマチュア局が行う場合の考え方は、次のとおりですので、アマチュア無線を有効に活用していただく際の参考としてください。
無線局は、免許状に記載された目的又は通信の相手方若しくは通信事項の範囲を超えて運用してはならないことになっていますが、電波法(昭和25年法律第131号)第52条第4号の規定に基づく非常通信(地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、有線通信を利用することができないか又はこれを利用することが著しく困難であるときに人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のために行われる無線通信をいいます。)等を行う場合は、免許状の目的等にかかわらず運用することができます。
その運用において、非常の事態が発生し又は発生するおそれがあるかどうか、有線通信を利用することができないか又はこれを利用することが著しく困難であるかどうか、人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のためかどうかの判断は、アマチュア局の免許人が判断するものであり、非常通信は状況に応じて柔軟に行えるものとしています。その際、アマチュア局の免許人は、あくまでもボランティアという性格で非常通信を行うことになります。
また、一般社団法人日本アマチュア無線連盟において、「アマチュア局の非常通信マニュアル」リンク先PDFファイルを別ウィンドウで開きますを策定していますので、適宜参考にしてください。
アマチュア無線と非常通信
JARLのホームページの中に「アマチュア無線と非常通信」という記事が有ります。
主要なポイントは以下の通りです:
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紀伊半島水害と東日本大震災におけるアマチュア無線家の活動:
2011年に発生した台風12号による紀伊半島水害や、同年3月の東日本大震災の際、アマチュア無線家たちは通信の確立と情報の提供に大きな役割を果たしました。これらの災害時に、アマチュア無線は被災地と外部世界との重要な連絡手段となりました。 -
非常通信訓練と協定:
2008年の名古屋大学地震防災訓練や、世田谷区と三文字クラブの災害情報収集に関する協定の締結など、様々な防災訓練や協定がアマチュア無線を利用して実施されています。これらは、実際の災害発生時に迅速かつ効果的な対応を行うための準備として重要です。 -
非常通信用無線機の配備:
JARLは、非常通信用の無線機器を各地方本部に配備しています。これには、HFから430MHzバンドまでカバーするトランシーバや、ハンディ機が含まれており、災害時の通信を支援するための重要な資源となっています。 -
JARLの基本方針:
JARLは、「非常通信に関する基本方針ならびに非常通信実施要領」を策定し、災害時の非常通信の支援体制の整備と運用に関する基本原則を定めています。これには、地方自治体等の災害応急対策への協力や、ボランティア精神に基づく非報酬の協力が含まれます。 -
非常通信協議会との連携:
JARLは、非常通信協議会のメンバーとして、全国的な非常通信ネットワークの確保に努めています。この協議会は、国の関連各省庁や関連企業・団体で構成され、災害への対応に貢献することを目的としています。
アマチュア無線が災害対策としていかに重要であるか、そしてJARLや個々のアマチュア無線家がそのような状況でどのように貢献しているかを示しています。
アマチュア無線と非常通信 https://www.jarl.org/Japanese/2_Joho/2-4_Hijou/Hijou.htm
アマチュア局の非常通信マニュアル
「アマチュア局の非常通信マニュアル」がJARLで作られています。(ココからダウンロード出来ます。)
非常通信確保のためのガイド・マニュアル
総務省非常通信協議会は、行政機関、地方公共団体、企業などにおいて防災関係業務に携わる者を対象に、災害等発生時における非常通信の確保に必要な措置について解説した「非常通信確保のためのガイド・マニュアル」を2017年3月15日に同省Webサイト上で公表しました。
同マニュアルには「アマチュア無線等による移動通信系の活用体制について整備しておくこと」「アマチュア無線の活用は、ボランティアという性格に配慮すること」と記載され、日ごろからの備えが大切であるとしています。
<「アマチュア無線の活用体制を整備」と明記>総務省、防災関係業務に携わる者を対象とした「非常通信確保のためのガイド・マニュアル」を公表
https://www.hamlife.jp/2017/03/16/emergency-radio-manual2017/
2011年3月11日に発生した東日本大震災など、一般的な通信インフラが機能不能に陥ったとき、アマチュア無線が需要な役割を担ったことは記憶に新しい。
今回公表された「非常通信確保のためのガイド・マニュアル」を見ると、「防災基本計画(平成28年5月中央防災会議決定)」の「第6節 迅速かつ円滑な災害応急対策、災害復旧・復興への備え」「(3)通信手段の確保」には、「携帯電話・衛星携帯電話等の電気通信事業用移動通信、業務用移動通信、アマチュア無線等による移動通信系の活用体制について整備しておくこと。なお、アマチュア無線の活用は、ボランティアという性格に配慮すること」と明記されています。
アマチュア無線の非常通信周波数
アマチュア無線の非常通信周波数は、バンドプランの中に明記されています。バンドプランは、下記の様に2つあります。
※アマチュア業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別を定める件(令和5年総務省告示第80号)
アマチュアバンドプラン:一般社団法人日本アマチュア無線連盟(JARL)のバンドプランです。このアマチュアバンドプランは、総務省の告示(をふまえて)に諸外国の運用や世界的な慣習等をふまえて、運用モードや形態を中心にわかりやすくまとめたものです。
※アマチュアバンドプラン(PDF)(令和5年9月25日施行)ここからダウンロード出来ます。
[sitecard subtitle=関連記事 url=”https://ja3cgz.com/bandplan20230925/” target=”_blunk”]
<アマチュア無線 非常通信周波数>
3,535kHz SSB/CW
7,050kHz SSB/CW
14,300kHz SSB/CW
18,160kHz SSB/CW
21,360kHz SSB/CW
28.20MHz SSB/CW
50.10MHz SSB/CW
51.50MHz FM
144.10MHz SSB/CW
145.50MHz FM
430.10MHz SSB/CW
433.50MHz FM
1294.00MHz SSB/CW
<アマチュア無線 呼出周波数・非常通信周波数>
51.00MHz FM
145.00MHz FM
433.00MHz FM
1295.00MHz FM
51.30MHz D-STAR(DV)/C4FM
145.30MHz D-STAR(DV)/C4FM
433.30MHz D-STAR(DV)/C4FM
<非常通信の連絡設定用周波数(総務省 周波数割当)>
4630kHz A1A
「A1A電波4630kHzの周波数は、非常通信の連絡設定に使用するものとし、連絡設定後の非常通信は通常使用する電波によるものとする。ただし、通常使用する電波によって非常通信を行うことができないか又は著しく困難な場合は、この限りでない」
アマチュア無線は災害時役立つのか
youtubeやホームページでも、非常通信について活発に発信されています。ここでは、動画と記事を1つずつご紹介させていただきました。ぜひ皆様にも共有していただければ幸いです。
【非常時の通信】今の時代、アマチュア無線が災害時役立つのか。昔と何が違うのか?色々と検証
【実験大好き!! MNLです】でいつも発信をしてくださる【MNL】氏が動画を出しておられます。大変貴重で参考になると思いましたので、ご紹介させていただきました。
アマチュア無線と非常通信
ホーム頁では、7L4CWL局(桜井宣彰)さんが、非常通信の方法、通信方法、非常通信周波数、非常通信の注意点、について詳しく解説されていますので、ご紹介します。
●他の者は傍受し通信を妨害してはならない。
●呼出周波数で非常通信を継続してはならない。
●非常通信周波数で通常の交信をしてもよいか?
●非常通信は自己責任で!
など、大変参考になります。
アマチュア無線と非常通信はこちら
まとめ:非常通信ガイド・マニュアル集~アマチュア無線の非常通信確保のために~
このブログ記事では、日本のような地震多発国において、災害時のコミュニケーション手段としてアマチュア無線がいかに重要であるかを確認してきました。
特に日本のような地震多発国において、通信インフラが断たれる状況下でのアマチュア無線の利用は、人命救助や災害救援活動において極めて重要な役割を果たします。過去に発生した東日本大震災や熊本地震の例を振り返りながら、アマチュア無線による非常通信がどのように機能し、多くの命を救ったかを探求しました。
アマチュア無線の非常通信に関する基本的な考え方、運用のための具体的なマニュアル、総務省やJARLによる指針の重要性も解説しました。これらの知識は、災害対策の計画において非常に価値があり、私たちが日頃から準備をしておくべき内容を含んでいます。
災害は予期せぬときに発生し、その影響は計り知れません。しかし、今回の記事が、もしもの時に皆さん自身や周囲の人々を守る助けとなることを願っています。アマチュア無線をはじめとする非常通信の準備と知識は、私たちが災害に立ち向かうための重要なツールです。この記事が、その準備を進める一助となれば幸いです。
Originally posted 2024-03-09 19:14:08.